ついに5Gを使ったサービスが日本でも始まりました。
世界からも注目を集める5Gは、これまで以上に便利な社会を実現すると期待されています。
しかしその一方で、
- 5Gには発がん性がある
- 5Gが電磁過敏症を促進させる
といった5Gが人体へ悪影響を及ぼす説があるのを知っていますか?
このコラムでは、5Gの健康被害について肯定否定それぞれの主張を見ていきます。
5Gとは
まずは5Gとはなにか簡単におさらいしておきましょう。
5Gとは第5世代移動通信システムのことで、4Gに続く新しい通信のかたちです。
5GのGはGeneration(世代)の頭文字をとっています。
5G通信では、高い周波数帯(日本では3.7GHz帯、4.5GHz帯、28GHz帯)を使うことで、以下の3つのメリットを持ち合わせます。
- 超高速・大容量
- 超低遅延
- 多数同時接続
→4Gと比べて20倍
→通信タイムラグは4Gの10分の1
→4Gの10倍となる、1平方キロメートルあたり100万台の同時接続が可能
5Gにより、リアルタイムに近いかたちでデータを送受信でき、くらしの利便性が劇的に向上すると予想されます。
たとえば、遠隔での治療や手術が可能になると、世界中どこにいても最先端の治療を受けられるようになります。
車は自動運転が主流になっていくでしょう。
さらに、自宅にいても高画質のVR映像によって、臨場感のあるスポーツ観戦やゲーム内での疑似体験を楽しめるように。
さまざまな分野に大きなプラスの影響を与えると言われています。
5Gによる健康被害とは
5G通信は私たちの生活に恩恵を与えると信じられていますが、その反面、深刻な欠点を指摘する声もあります。
冒頭で示したとおり、5Gには発がん性や電磁波過敏症の促進など、私たちの健康をおびやかす危険性があるというのです。
背景にあるのはミリ波と呼ばれる高周波数帯の使用。
先ほど5Gで使われる高周波数帯を紹介しましたが、それらは以下のように細分化できます。
- 3.7GHz帯、4.5GHz帯
- 28GHz帯
→Sub6と呼ばれる比較的低い周波数帯で、実質4Gの延長線上で使用できる
→ミリ波と呼ばれ、Sub6と比較して非常に高い周波数帯
※厳密には、ミリ波は通常30GHz~300GHz帯を指すが、近い数値なので28GHz帯もほとんどの場合ミリ波と呼ばれる
ミリ波を使うことで、5Gの3つのメリットを実現するのに欠かせない、広大な帯域幅を確保できます。
一方でミリ波には、まっすぐ進みたがる、水分に弱いと言った性質があるので、障害物の多い街中や雨の日には弱まりやすいというデメリットも。
これを補うためには、5Gの電波をつなぐ小さな基地局がたくさん必要になります。
つまり5G社会においては、4Gより圧倒的に高いミリ波という電波が飛び交うだけでなく、基地局を増やすことで住宅との距離が縮まり、私たちはより多くの電波にさらされることになるのです。
高周波帯の電波を日常的に浴び続けることが、人体への悪影響を及ぼし、健康被害を引き起こす……。
5G電波の危険性がもし本当なら、寿命と引き換えに快適さを求めるような事態になりかねません。
5Gの健康被害はデマ、嘘という声も
5Gが人体に悪影響だと叫ばれる一方、それはネット上のデマや嘘に過ぎないという意見もあります。
たしかに、2018年にオランダで5Gの実験電波を飛ばしたら近くの公園にいた大量のムクドリが突然死したというニュースがSNSで拡散されましたが、のちにフェイクニュースだとわかった事件がありました。
また、5Gの電波が新型コロナウイルスを拡散させているという5G陰謀説なるものまであらわれましたが、WHOはこれを否定しています。
しかし、この5G陰謀説を信じる人々は世界中にいるようで、イギリスやオランダでは5Gの基地局が襲撃されるという事件にまで発展しました。
南米ペルーやボリビアでも、両国にはまだ5Gが導入されていないにもかかわらず、5G陰謀説を信じた人によって通信施設が破壊されたり、作業員が住民らに拘束されたりする事件が起きました。
このように、5Gについてはたくさんの根拠のないうわさやデマも存在し、それを盲目的に信じる人も後を絶ちません。
私たちは様々な説についてやみくもに信じるのではなく、信頼できるデータにもとづいて5Gの安全性を見極めるべきと言えるでしょう。
5Gの健康被害に言及した論文
信じる人もいれば疑う人もいる5G。
世界には、人体に悪影響を及ぼすという論文や研究結果を報告する科学者も少なくありません。
ここでは、以下に2つの例を紹介します。
5Gは人体の発汗作用に悪影響を及ぼす?
イスラエルのアリエル大学で物理学を教えるベン・イシャイ博士による実験で、5G電波が人体の汗が流れる管に徐々にではあるが破壊的な影響を与えることが明らかになった。汗が流れ出る管はらせん状になっているが、5Gの発する75~100GHzの周波数はこうした管に影響をもたらすため、発汗作用が異常をきたし、ストレス解消のための発汗作用が機能しなくなる恐れが出てくる。
※ただし日本の5Gで用いられる周波数帯は3.7GHz帯、4.5GHz帯、28GHz帯
5G電磁波が遺伝子(DNA)に悪影響?
ワシントン州立大学の名誉教授で、生化学だけでなく無線放射線や電磁波の専門家でもあるマーティン・ポール博士によれば、5Gの電磁波は人間の生殖能力、脳、心臓機能に影響をもたらし、最終的には遺伝子(DNA)にも作用を与えるとのこと。同博士の実験では、妊娠中の牛が電磁波を発する基地局の近くにいると、生まれた子牛が白内障にかかる可能性が高くなると判明。253頭の子牛のうち、32%に当たる79頭が白内障に罹患。基地局から100~199メートルの範囲内にいたメス牛から生まれた子牛には、それ以上の距離にいた場合よりも高い確率で重度の白内障が見つかった。
この他にも、アメリカで5Gの電波塔の近くに基地をかまえる消防士たちが頭痛や不眠、記憶障害や意識障害を訴え、近くに電波塔のない別の基地に異動したところ、すっかり症状が治まったという報告もあります。
また、世界保健機関(WHO)の組織のひとつである国際がん研究機関(IARC)は、携帯電話用の電波の発がん性レベルを2B(発がん性があるかもしれない)としており、5Gの電磁波については2Bより高いリスクも指摘されています。
このような報告を受けて、すでにベルギーやイタリア、スイス、アメリカの一部では5Gの使用中止または延期に踏み切っているのです。
5G電波の人体への影響について総務省は
では、日本は5Gをどう見ているのでしょうか?
総務省が作成したリーフレット『第5世代移動通信システム(5G)の健康への影響について』では以下のように述べられています。
さらに『電波と安心な暮らし~知っておきたい身近な電波の知識~』では、次のようなWHOの見解も取り上げています。
日本は現時点で、5Gによる健康被害を認めない立場であるということがうかがえるでしょう。
5Gを含む、300GHzまでの周波数に対応した電波の安全性に関する国際的なガイドラインは、国際非電離放射線防護委員会(ICNIRP)や米国電気電子学会・国際電磁界安全委員会(IEEE ICES)で策定されており、多くの国で採用されています。
日本の基準もこれに準拠し、安心して利用できると主張しているのです。
結局5G電波による健康被害はあるのか
残念ながら、5Gによる健康被害について、今のところ明確な答えは出ていません。
だからこそ、いよいよ5G導入というこのタイミングで、人々の関心がより高まっているのでしょう。
5Gの安全性がはっきりせず、導入に積極的な国と消極的な国があるなかで、日本の立場は前者。
国内では5Gの健康被害に関する議論や注目が黙殺されているという声もあります。
一方で、論コレで「5G」と文献検索すると100件近い論文がヒット。
海外では、5Gに関する医学論文がたくさん執筆され、議論も盛んです。
日本に忖度があるのか、単なる都市伝説かは定かではありません。
でも、日本の都合に左右されない海外の情報から新たな視点を持つことは、間違いなく有意義といえるでしょう。